消化不良感は否めない
ここ数年、かなりのペースで出版されている岩田氏の新刊。間違いなく日本を代表する経済学者であり、かつ一般に訴求する文章力もある人なのだが、正直に言うと本書にはマンネリ感を感じてしまった。日銀の内部価値観にアングルを持っていっただけで、本筋では既刊本と変わらない。
そして、著者の主張の穴も、変わらず残されたままだ。どうやって人為的にインフレを起こすのか。そして、デフレの理由とはなんなのか。170p「日本でデフレが起きる理由」では、「デフレで名目所得が増えなかったからデフレになった」と、以前の著者ならありえなかったような反復的記述がされる。
昨今の行きすぎた金融緩和を批判する流れを受け、新規軸を打ち出すことを期待していただけに、この路線は残念だ。私は著者の学派の信者ではない。一読者である。固執は信者を喜ばせはしても、その他へはけして浸透することは無い。
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